矯正用アーチワイヤーは、『両端を支持された梁』とみなしてその特性を解析されます。
解析に当たり治療上、重要視されるのは、
強さ strength
剛性 stiffness
弾力性 springness
有効たわみ距離 range
荷重が小さい場合、ワイヤーのたわみは荷重に比例して増加するが、その荷重を除去すればワイヤー元に戻る。(
弾性 )
ワイヤーに加えられる荷重が弾性限界を超えて増加すると、たわみが更に増加して、荷重を除去してもワイヤーのたわみが元に戻らずに塑性変形が生じる。 更に荷重を増加させると、ついにはワイヤーが破断してしまう。
ワイヤーに0.1%の変形が認められる点を降伏点と言い、降伏強さを現す。 更にその先に、ワイヤーが耐えうる最大荷重を極限強さと言い、永久変形が起きた後とはいえワイヤーが発揮する最大限の力を示します。
剛性と弾力性は相反する性質で、『 剛性 = 1 / 弾力性 』 で示されます。 上記の図において、勾配が緩やかなほどワイヤーは弾力性に富み、勾配が急なほど剛性に高い硬いワイヤーです。
有効たわみ距離は、上記の図において、永久変形がちょっとでも起きる前にワイヤーが弾性限界内でたわむ距離のことです。
ワイヤーに弾性限度内の荷重を加えてたわみを与えると、ワイヤーの内部には弾性エネルギー( レジリエンス resilience ) が貯えられる。
下図では、斜線部分の面積が弾性エネルギーの大きさに相当する。
強度と弾力性が組み合わさったワイヤーのエネルギーの蓄積を示し、この弾性エネルギーが大きいと、ワイヤーの復元力が増して弾力性が増します。 その結果として、より持続的な矯正力の発現に結びつくのです。
そのほかのワイヤーの一般的特性として、
一定たわみ当たりに対する荷重は、ワイヤーの長さの3乗に反比例します。
また、一定の捩れ角当たりに対する荷重は、ワイヤーの長さに反比例して、直径の4乗に比例します。
その名の通りコバルト(Co)とクローム(Cr)を含む合金です。
冷間加工と低熱処理硬化性とにより、適切な剛性と高弾性を得ることができる。 たわみと荷重の関係は直線的です。
良く、形状記憶合金などと言われます。 驚くことにアメリカの宇宙開発計画の中で生まれた合金です。
結晶構造に基づくマルテンサイト相変態により、ワイヤーに加えられる歪みが大きく変化しても、ワイヤーが発揮する応力がほぼ一定であるという性質を持っています。 荷重を加えた時と荷重をのけた時とでは異なる曲線を描き、歯がちょっとでも動くと応力が一気に開放され弱い力が持続的に働くようになります。
従って理論上は、
という応力ー歪み曲線を描きますが、実際上は、
という応力ー歪み曲線を描くワイヤーです。 すなわち、本当の形状記憶合金では無く、超高弾性ワイヤーであると言えるでしょう。
強さと弾力性のバランスに優れている。
コバルトクロム合金よりも低い弾性係数と高い弾性限度を有して、弾性エネルギーが大きい。
アレルギーを起こす恐れの高いニッケルを含まない材料です。
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矯正歯科治療の背景となる基本的な事柄について説明しています。