矯正力による歯の移動というのは、分かりやすく言うと 『 歯と歯の引っ張り合い・押し合い 』 です。
基本として押さえなければいけないのは、
● 前歯と奥歯とでは、奥歯の方が固定源として抵抗力が強い。
● 同じ矯正力でも前歯の方が動きやすい。
● 傾斜移動は歯体移動よりも弱い力で済む。
ということです。
そして、矯正の力系Force systemを組むというのは、ゴールへ向けてどれだけ効率的に歯を動かす力を加えられるか、が大事になります。
この時に考えなければいけないのは、
1.歯にどういう力が加わるのか?
2.固定をどうするのか?
3.そのためにどういうワイヤーを選択するのか?
になるでしょう。
歯に矯正力が加えられると、力を加えられた点に作用点ができる。
また、物体には必ず抵抗中心というものがあり、通常の矯正治療の場合、歯の抵抗中心は歯槽骨に埋まっている歯根部分のほぼ中央に相当する。
そして、矯正力が抵抗中心を通らないので必ずモーメントが発生する。
その結果として、歯に矯正力が加わると歯が傾斜して回転する動きをします。
常にこれらのことを念頭に置きながら、力系を考えるのです。
歯列矯正における固定とは、望まない歯の移動に対する抵抗、という意味です。
歯を動かすために矯正力を加えると、必ずそれと同等の大きさで反対向きの力(反作用)が生じます。 当然、反作用の力だって歯を動かす力があります。 しかし、それでは歯の動きに収拾がつかなくなってしまいます。
動かしたいと思う歯の移動をできるだけ完全に行い、望ましくない副作用をできるだけ抑えて生じないようにすることが、矯正歯科治療中には求められています。 基本的な考え方としては、矯正力による反作用を出来るだけ多くの歯に分散させることです。
矯正治療の臨床の場面では、奥歯が固定源となることが多く、その固定源に強さを最大限に求めるのか、弱くても良いのか、などを考え合わせます。
概念的には、1本の歯の移動力に対する抵抗力は歯根の表面積の関数(固定値)で示される。 歯根が大きいと、力が伝わる領域が広くなり、抵抗力が増す。
それぞれの歯の固定値は、大臼歯で500前後、小臼歯と犬歯で250前後、前歯で200前後、というところでしょうか。
歯に同じ方法で同じ大きさの力が加えられ、お互いにほぼ同じ量だけ動く。
差が出るとすれば、摩擦、抵抗源等の差による。
抵抗源となる歯を追加することで、固定源の歯を増したり、顎外固定装置を用いたり、矯正用インプラントを用いたりすることなどがある。
一群の歯を歯体移動させ、一群の歯を傾斜移動させる時の抵抗源とすることです。
矯正歯科治療におけるワイヤ選択では、
● ワイヤーの復元力を利用して歯を動かすのか?
● ワイヤーに沿って歯を動かすのか?
このことを考えて、ケース・バイ・ケースでブラケットのスロットサイズとの兼ね合い(摩擦力)を考え合わせます。
そして、ワイヤーの弾力性を優先したり、ワイヤーの剛性を優先したり、
と、ワイヤーの材質(コバルトクロム合金、ニッケルチタン合金、チタンモリブデン合金など)や形状(丸型、角型)やサイズの中から適切なワイヤーを選びます。
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矯正歯科治療の背景となる基本的な事柄について説明しています。